ボイラー補機〜誘引通風機(IDF)の概要
誘引通風機(IDF)とは、ボイラーの補機であり、ボイラー火炉圧力を負圧(大気圧以下)に保持するための送風機です。
通風系統において、最も下流に設置されます。
英語表記(:Induced Draft Fan)の頭文字をとった「IDF」で呼称されるのが一般的なため、本ページの表記もこれに倣います。
今回はIDFの概要について説明します。
IDFの役割
押込通風機(FDF)とは、ボイラーの補機であり、ボイラー火炉圧力を負圧(大気圧以下)に保持するための送風機です。
石炭焚きボイラーは油焚きやガス焚きに比べ燃焼排ガスに多くの煤塵や腐食性ガスが生成されるため、ボイラーの隙間から噴出しないように防止します。
IDFの機器構成
送風機本体、送風機本体を駆動する電動機およびその他付属設備で構成されます。
付属設備として、風量制御機構(動翼,入口ベーン等)を操作するコントロールドライブや油圧装置,すべり軸受を潤滑する潤滑油給油装置等があります。
送風機本体
送風機は、羽根の作用によって、速度や圧力を気体に加えて外部に送り出す機械です。
遠心ファンまたは軸流ファンの2形式に大別されます。
遠心ファン
遠心ファンは、羽根車の回転により気体に遠心力が加えられ機能します。
気体を羽根車前面から吸い込み、羽根車の半径方向に吐き出すので、流れの向きが90°変わるのが特徴です。
遠心ファンでは吸込ベーン操作によって風量制御が行われ、操作機構としてコントロールドライブが設置されます。
軸流ファン
軸流ファンは、羽根車の揚力の作用によって機能します。
気体を羽根車前面から吸込み、そのまま羽根車の軸方向に吐き出すので、流れの向き一定で変わらないのが特徴です。
軸流ファンでは可変動翼の開度操作によって風量制御が行われ,操作機構としてコントロールドライブとともに油圧装置が設置されます。
ファン個々の特徴に合わせた設計・製作が行われるすべり軸受が採用されます。すべり軸受の冷却機構には冷却水方式と潤滑油供給方式があります。
電動機
FDFを駆動する原動機として、大容量の高圧(6.6kVまたは3.3kV)三相かご型誘導電動機が採用されます。
電動機は,軸継手によって送風機に直結されます。
大容量かつ慣性モーメントの大きい負荷(送風機)特性により,起動時に定格電流の4~5倍以上の起動電流が長時間継続して流れ,電動機に過度な温度上昇が発生するため,繰り返し起動にあたっては制限を受けます。
コントロールドライブ
風量制御機構(動翼,入口ベーン等)のアクチュエータとしてコントロードライブ(軸流ファンの場合は油圧装置も)が設置されます。
遠心ファンではコントロールドライブのレバーによって入口ベーンを操作,軸流ファンではコントロールドライブのレバーによって油圧装置のパイロット弁を開閉し動翼開度を操作します。
潤滑油給油装置
給油装置は、主油ポンプ、補助油ポンプ、非常用油ポンプおよび油タンク、タービン油などで構成されます。
主油ポンプは、FDFの軸に直結され、FDF運転時においてFDF本体電動機より駆動力を受けて,軸受に潤滑油を供給する役割を持ちます。
補助油ポンプは、電動駆動ポンプが使用され,FDF停止時において,主油ポンプに代わって軸受に潤滑油を供給する役割を持ちます。
非常用油ポンプは、直流電動駆動ポンプが使用され,停電時においてバッテリー電源によって駆動し,主油ポンプおよび補助油ポンプに代わって軸受に潤滑油を供給する役割を持ちます。
軸に直結する主油ポンプ以外のポンプは主油タンク上に設置されます。
油圧装置
油圧装置は、油タンクと制御油ポンプなどで構成されますが,油タンクおよびタービン油は潤滑油給油装置と共用されることが一般的です。
制御油ポンプは,電動駆動ポンプが使用され,
IDFの制御と計測
IDFには、ボイラー負荷に応じて必要な空気量を制御する自動制御装置、IDFに故障等の異常状態が生じたインターロック停止する保護装置が備わります。
また、これら自動制御装置や保護装置の動作、さらに運転管理のため、プラントや装置に対し必要な計測が行われます。
自動制御装置(空気流量制御用)
IDFで空気流量制御を行うため、自動制御装置による次の制御ループが構成されます。
・検出部:空気流量計、ガス分析計
・調節部:ボイラー制御装置(ABC)
・操作部:動翼または入口ベーン操作機構
役割
ボイラー火炉において供給される燃料を安定に燃焼させるとともにNOx発生の抑制のため、FDFによる空気流量の制御が行われます。
空気量が少なすぎると燃焼が不安定となり、失火する恐れがあります。
空気量が多すぎると、空気によってボイラーが冷やされ、熱効率低下します。一方で,サーマルNOxが過剰に発生し、排ガスの環境規制値を超過する恐れがあります。
制御ロジック
一般にボイラー制御装置(ABC)によって、次の手順で空気流量が制御されます。
①ABCで演算出力された燃料流量指令を,関数発生器によって,空気流量ベースの指令信号に変換します。この信号が空気流量指令の基準信号となります。
②ボイラー出口ガス酸素濃度定値制御による補正(空燃比補正)、ボイラー入力加速信号(BIR)フィードフォワード制御の補正(BIR補正)が加えられます。これら補正後の信号が,空気流量指令値(空気流量の目標値)となります。
③空気流量が空気流量指令値と一致するように,FDFの風量操作(動翼開度やベーン開度操作による)によってPI制御が行われます。
保護装置
保護装置とは、各機器に異常が生じた場合に、機器を異常から保護するために各種の保護動作を行う機能を指します。
ここでは、保護動作としてFDFを停止させる保護装置について述べます。
FDFの保護装置は、ボイラー主機の保護を目的とするもの(ボイラー保護インターロック)、FDFそのものの保護を目的とするもの(補機インターロック)の2種に分類することができます。
ボイラー保護インターロック(MFT)
・火炉ドラフト異常高・低
・IDF停止
補機インターロック
・軸受油圧低下
・電動機保護継電器動作(#50、#49、#51)
計測対象
制御および運転管理を目的に,下記の計測が行われます。
制御用
・二次空気流量
・一次空気流量
・ボイラー出口O2濃度
運転・品質管理用
・FDF吐出圧力
・FDF吸込圧力(大気圧)
・軸受温度
・電動機電流
FDFの運転
FDFは、通常運転時における燃焼安定性の確保、起動時における火炉パージによる保安確保のため、常に安定に運転されることが要求されます。
FDFの運転における留意点として、FDFの起動・停止、通常運転中の監視、性能管理について述べます。
起動
FDF起動前条件
・FDF油タンクレベル正常,オイルクーラ,軸受への冷却水通水
・FDF-AOPおよびCOP「起動」
・FDF開度制御モード「自動」
・通風系統のダンパ制御モード「自動」
・IDF起動完了
FDF起動タイミング
ユニット起動時におけるボイラー点火前の煙風道系統起動工程において起動されます。
煙風道系統起動では,はじめにAHが起動し,次にIDFが起動し(IDF設置プラントのみ),後に本機が起動されます。
停止
FDF停止タイミング
ユニット停止時において、ボイラーのバーナーが全て消火し、火炉パージを規定時間実施した後に停止します。
FDF停止時の動作・処置
FDFが停止すると、燃料の燃焼に必要な酸素が供給されなくなり、ボイラーの運転を継続することができなくなります。
従って、FDFが故障などによって運転できずに停止した場合、ボイラートリップとなり、ユニットトリップとなります。
MFT動作によりユニットトリップとなります。
炉内および煙道に未燃ガスが滞留している可能性があるので,次の通り,ガスの放出を行います。
①FDFが複数機ある場合は,健全機にて炉内パージを行います。
②ダンパを全開にし,自然通風を構成します。

